複数板の定常熱伝導

複数板を重ねた時の定常熱伝導の計算をしました。

<記事作成時環境>
 Salome-Meca 2018 for Windows
<動作確認環境>
 Salome-Meca 2018 for Windows
 Salome-Meca 2019 (OS :ubuntu18.04 , CAELinux2020Lite)
SalomeMeca 2021 for Windows(OS:windows11)(commファイルとmedファイルを読み込んで確認)

* 本記事は2020年11月3日付けにnoteに掲載していた記事について転載と一部更新を行いました。

1.解析の概要

2枚の板を重ねて、片面に温度と熱流束を設定したときに反対側の面の温度を計算します。なお、片面の温度と熱流束は均一と仮定します。

概略図

板:1辺2mの正方形、厚み0.02m(20mm)x2枚
熱伝導率:アルミ236 W/m・K、SUS304 19W/m・K
高温側温度:100℃
熱流束:250W/m2(板には1000W)
メッシュ:6面体1次要素

2.計算結果

低温側温度:99.715℃

計算結果

3.検算

伝熱工学の計算式を使い検算を行いました。
定常熱伝導は、複数板の伝熱工学の計算式では以下であらわされます。
Th- Tl = q  x  ( L1 / λ1  + L2 / λ2 )
Tl = Th- q  x  ( L1 / λ1  + L2 / λ2  + … + Ln / λn )
Th : 高温側温度(℃)、Tl : 低温側温度(℃)、q : 熱流束(W/m2)
L1 : 1枚目板の厚み(m)、λ2:1枚目板の熱伝導率(W/m・K)
L2 : 2枚目板の厚み(m)、λ2:2枚目板の熱伝導率(W/m・K)
Ln : n枚目板の厚み(m)、λn:n枚目板の熱伝導率(W/m・K)

<補足>
この伝熱の場合、電池に抵抗を接続したときの電気回路とみなして対比(アナロジー)させると理解しやすいと考えます。
温度差(Th-Tl) → 電圧
熱流束(q)   → 電流
熱抵抗(L1 / λ1  + L2 / λ2+ … + Ln / λn )   → 抵抗
熱抵抗は抗線と同様に、長さに比例して大きくなり、熱の流れやすさ(熱伝導率)に反比例して小さくなります。

今回は、板は2枚で1枚目の板はアルミ、2枚目の板は鉄のため
L1 / λ1  + L2 / λ2 =  0.02 / 237 + 0.02 / 19 = 0.001137 
Tl = 100 -250 x 0.01137 =99.715℃
SalomeMecaの計算値は、上記の公式とほぼ一致していました。

4.まとめ

SalomeMecaの伝熱計算は、伝熱工学の計算式とほぼ一致していました。
そのため、複雑な形状における物体の伝熱推定に応用できると考えます。

<参考資料>
*.comm:解析ファイル、*.med:メッシュファイル