論文事例:令和2年度電気電子部門(選択科目:電気設備)III-2

論文作成例として昨年添削しました復元論文を紹介します。
本論文は、令和2年度に受験されましたO様の復元論文でありご了承いただき公開をしています。改めてこの場を持ちましてお礼申し上げます。 なお、復元論文のため、試験で回答した論文と相違があると思いますが、ご了承のほどお願いします。

本論文は、電気電子部門のため機械部門とは専門技術は違うものの、作成にあたる工夫点・留意点は機械部門も同様のため視野を広げるにも有効だと思います。論文の作成に悩んだときはお読みいただければと思います。

1.問題と論文作成者様の論文

1.1 問題本文

黄マーカー:論文を書く上で抑える点、橙マーカー: 論文作成にあたる制約条件

我が国では、バブル期に大量供給された中小の賃貸オフィスビルが、築25年~30年以上経過しており改修の実施が迫られている。建築物を従来のスクラップ&ビルドから既存建築ストックの有効活用へと転換しつつあるなか、これらの中小の賃貸オフィスビルの効果的な改修計画を立案するに当たり、以下の問いに答えよ。
なお、中小の賃貸オフィスビルの規模は次の通りとする。
・高さ:8階建て以下
・延べ面積:10,000m2以下
・耐震レベル:新耐震レベル以上
・更新スペース:考慮されていない

(1) 技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。
(2) 抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考え方を示せ。

引用元:公益法人日本技術士会 添付資料P.3より (https://www.engineer.or.jp/c_topics/007/attached/attach_7385_6.pdf

1.2  論文作成者様の回答

24文字で改行をしています。

1.中小の賃貸オフィスビルの改修計画の課題
 課題は、物の課題、技術面の課題、経済面の課題
ついて述べる。
1.1 物の課題:電気設備の老朽化である。電気設備の老
朽化により、故障が起こる可能性が高くなる。また、
築25~30年のビルとなるため、電気設備の保守部品も
手配が難しくなる。
1.2 技術面の課題:電気設備の省エネ化である。古い
電気設備を使用していると省エネ化できていない製品
を使用しているため、設備を更新して省エネ製品を使
用することで他に電気を使用することが可能となる。
1.3 経済面の課題:改修工事費用がかかることである。
新設設備を導入するという事は、オーナーにとって
は資金がかかる。そのため、設計者と必要な設備の
みの導入を検討し、無駄な設備を導入しないように
する必要がある。

2.重要と考える課題と解決策
2.1重要と考える課題:課題は、電気設備の老朽化
ある。理由は、老朽化した電気設備を使用し続けると、
故障などによる火災が発生する確率が高い。8階建て
ビルのため火災が起これば、近隣に被害が発生する。
2.2解決策:解決策を3つ述べる。
1)コージェネレーションシステム(CGS)の導入:CGS
の導入を検討する。CGSは、電気と熱のエネルギーを
使用するため、エネルギー効率が良い。エネルギーコ
ル率は40~60%である。

2)太陽光発電併用蓄電池(図1参照):
太陽光発電併用蓄電池を導入する。
太陽光発電で電力を創り、使用する。
余った電気は、蓄電池に貯蔵する。非
常時に蓄電池で貯蔵した電気を使用す
る。
3)空調システムの導入ガスエンジン・ヒートポン
プ・エアコン(GHP)
を導入する。ヒートポンプで
の暖房能力に加え、ガスエンジンの排熱熱を利用す
る。空調の心臓部、コンプレッサーをガスエンジン
で駆動させ、エンジンの余力で発電する。
3.新たに生じるリスクと対策
3.1新たに生じるリスク:リスクは、イニシャルコス
トが高いことである。設備導入時にはイニシャルコ
ストが発生する。設備導入前よりもランニングコス
トが減少すれば、導入効果がある。
により、導入前のコストより低減をすることがで
きる。
3.2 対策
1)ランニングコストの低減:設備導入時にランニ
ングコストも考慮しておく。ランニングコストを
低減することにより、導入前のコストより低減を
することができる。
2)補助金の活用:補助金を活用することにより資金を
する資金を抑制することができる。また、最新設備を
導入することで、省エネルギー化により電気代が安く
することができる。
3)人材育成:仕事の分担ができるようにする。システ
ムに対して、ある人しかできないでは、その方がいな
いと対処ができない。そのため、その方がいなくても
仕事が滞ることが無いよう人材育成を図っていく。
―以上―
* 2.1(図1)は省略しています。

2.しょちょーの添削内容

全体、よかった点、気になる点という視点で添削を行いました。
黄マーカーが論文を書く上で押さえる点、橙マーカーが論文作成にあたる制約条件と判断しました。
2.1~2.3が私の添削内容です。
緑マーカー:キーワード
赤マーカー:問題あり
青マーカー:適切な記載

2.1 全体

この問いの回答は、築25~30年程度のオフィスビルの改修計画を述べることです。
それに対しては、おおむね設問に対しては回答をしていました。
気になったのが、延べ面積や耐震レベル、更新スペースの中にこの問いに関するヒントが潜んでいるようにも思えました。
論文を見ると、技術面やマネジメント面について述べていますので、一定レベルはあると思われると考えられます。具体的な事例をあげられるとIIIの論文の内容は合格圏内に確実に入ってくると思います。
(3)は共通する課題として、保守・廃棄に関することを述べるとよかったかもしれません。
課題の回答としてはOKですが、この問いでは「専門技術を踏まえた考え方」という答えがあるので、人材育成は、技術面を述べないと趣旨に沿った回答をしていないという受け取られる可能性があります。
 補助金の活用は、専門技術を踏まえた考え方という目線だと添削者の意見が分かれる点だと考えます。今回は、最新設備を入れるためにお金がかかるため補助金を活用する趣旨の記載があるため、専門技術を理解しているという判断としました。

2.2 よかった点

(1)の多面的な課題を抽出できていました。
(2)の重要な課題と解決策もおおむねできていました。課題は省エネ化としても述べてもよい内容だと思います。
(3)の共通するリスクは挙げられていました。

2.3 気になる点

(3)の共通するリスクの内容は、技術面の記載が少ないです。
人材育成は、設備の設計や維持の人材は必要ですが、技術面で述べるのは難しいと思います。もちろん電気工事士の資格取得等の考え方はあると考えます。
一例として、技術面の記載をした例を示します。
3.1 初期コストが高額
 設備導入時には…である。設備導入時にはランニングコストの減少すれば…
 対策は、以下の2点があげられる。

A) ランニングコストの低減
 設備導入時にはランニングコスト…
B)補助金の活用
 補助金活用により導入資金に使う設備に…。また、最新設備を導入することで…
3.2導入設備の廃棄・保守
 設備を使用していくうちに部品の消耗等による交換が発生するが予想され、その際に導入時の部品が将来環境規制の厳格化により規制に抵触して使用できないリスクがある。最近の事例だと、照明設備の蛍光灯である。これは水銀が含まれることから、LED照明への刷新が進んでいる。対策は、設備設計時に国際的な規格や環境基準(例えば、RoHS2規格)を満たした部品を採用する。また、耐久寿命の長い部品を採用する。

3.2は蛍光灯の例を入れているので、電気電子部門の技術は理解していると受け取ってもらえると思います。